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「手紙」2006 [映画・邦画]

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〔2003年/日本/葵プロモーション〕




川崎のリサイクル工場への送迎バス。
最後部座席に野球帽を目深に被った青年の姿がある。
武島直貴、20歳。

暗い目をしたこの青年には、人目を避ける理由があった。
兄の剛志が、直貴を大学にやる学費欲しさに
盗みに入った邸宅で人を殺してしまったのだ。

数度にわたる引越しと転職。

兄貴がいる限り、俺の人生はハズレ。
自暴自棄になる直貴を、深い絶望の底から救ったのは
由美子の存在だった。

しかし、その幸せが再び脅かされるようになった時、
直貴は決意する。塀の中から届き続ける、
「手紙」という鎖を断ち切ってしまう。





先日の「告白」でスカっとさわやか、ストレス解消できたので、
夢よもう一度、Amazonで原作者の港かなえ先生を検索すると
この「手紙」が表示された。

おぉ、「手紙」も港かなえ先生か!、ぜひ見てみよう。
きっと爽快な復讐完遂物語だろう!。
結果…、東野圭吾先生の作品で港かなえ先生とは
縁もゆかりもない一作だと、本編終了12秒前に気づいた。


重い。実に重い。

犯罪を犯した者はいい。いや、よくはないが、
それよりも重い宿命を、ある日突然、
強制的に背負わされてしまうのが、罪人の家族である。

自分はなにも悪くないのに、なぜこんな目に遭わなければ
ならないのか。それでも頭を下げ、謝罪し陽のあたる場所を
避けて生きていかなければならない…。

だから、どうしても隠して、隠し続けて生きていきたい。
しかし、隠し通せるものではなく、どこからともなく
周りに知られてしまう。手のひらを反す人々…。

その度に職を変え、住み家を変え、
それでも生きていかなければならない。

原作からの変更点として弟の設定が、
バンドマンから、漫才師となっている。
これがラストの刑務所への慰問で、舞台から兄に
メッセージを送る場面として、より活きたものに
なっている。

弟の想いを受け止め、爆笑の客席のなか、
ただひとり涙する兄。でも、感動!まではいかない。
だって、受刑者だもの、人を殺しているのだもの。
そのせいで弟がどれだけ外界で迫害されてきたことか。
自業自得のクセに涙でごまかすなよ、と。


沢尻エリカさん芸能界引退記念作としては、
ふさわしいスケールの超大作であった。



評価 ★★★☆☆
nise!(12)