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「声優夫婦の甘くない生活」2019 [映画・洋画]

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〔2019年/椅子ラエル〕(日本公開2020年)




1990年のイスラエルが舞台。
この地へ移民してきた初老の2人、ヴィクトルとラヤ。

かつてソ連に届くハリウッドやヨーロッパ映画の
吹き替えで活躍していた声優夫婦。

しかし、新しい土地で夢であった人生の第二章を
切るハズが現実の世界は…声優の仕事がなかった…。

生活を支えるため、妻のラヤは夫に内緒で、
テレフォンセックスのオペレーターの仕事に就き、
七色の声を駆使し、思わぬ才能を発揮しはじめる。

一方、夫のヴィクトルは、フラリと入った違法な
海賊版レンタルビデオ店で再び声優の職を得る。
もちろん違法である。

ようやく生活も安定し、軌道に乗り始めたかに
見えたが、ラヤの秘密が発覚したことをきっかけに、
長年気付かないふりをしてきたお互いの不満が
顔をのぞかせはじめたのだった…!。




試写会で観た。




1990年代が舞台だけあり、登場する映像媒体は
VHSビデオテープ!。まだ、世の中はアナログ。

インターネット、スマホの普及により、
配信で自宅に居ながらにして手のひらで
映画が気軽に鑑賞できる時代がやってくるなんて、
夢にも思わなかった頃。

棚にズラリと並べられたビデオテープの絵面は、
すでにおとぎ話のようである。

愛情表現のヘタなおいぼれ亭主の哀しき物語。
妻に対する愛情は人一倍ある…ように見える。

それは開幕当初から、飛行機から降り立つ妻の写真を
撮るシーンからも感じ取れる。

ただ、それが周りへの迷惑を顧みない行為であっても。
そう、この亭主「空気が読めない」のだろう。
昭和時代なら「男は黙って」とか「不器用ですから」、
「武士は食わねど」などと美徳とされたものだが
令和の観客が観る映画だ。現代ではそれは通じない。

女側だっておとなしく黙ってはいない。それが令和だ。
切り替えが早い。
すばやいスイッチングにより、
もう次の「ときめき」を見つけている。

だが、亭主はどこまでも女房を追い続ける。
捨てられるのを怖れるように、母親とはぐれた幼児のように。
とことんまでに滑稽で哀しいところだ。
男っていう生き物は本当に哀しいなぁ…。



「コメディ」なのか、「ヒューマンドラマ」なのか、
「ラブストーリー」なのか、ジャンル分けに困る作品。
いや、今まさに「シニアラブコメ」という
新しいジャンルが誕生した瞬間か。






評価 ★★★★☆
nise!(14) 

nise! 14