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「ひとくず」2019 [映画・邦画]

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〔2019年/日本/テンアンツ〕




生まれてからずっと虐待の日々が続く少女・鞠。

食べる物もなく、電気もガスも止められている
家に置き去りにされた鞠のもとへ、犯罪を重ねる
破綻者の男・金田が空巣に入る。

幼い頃に虐待を受けていた金田は、鞠の姿に
自分を重ね、社会からは外れた方法で彼女を
救おうと動き出す。そして、鞠の母である凜の
恋人から鞠が虐待を受けていることを知る。

虐待されつつも母親を愛する鞠。
鞠が虐待されていると確信した担任教師は、
児童相談所職員を連れてやって来るが、
鞠は母の元を離れようとせず、保護することが
できずにいた。金田は鞠を救うため虐待をする
凜の恋人を殺してしまう。

凜に力ずくで、母親にさせようとする金田。
しかし、凜もまた、虐待の過去を持ち、
子供の愛し方が分からないでいた・・・。




日本映画は衰退の一途だとあきらめていたが、
良品に出会ってしまった。

男と女とその娘。
その全員が親による虐待を受けて育った被害者。
人との接し方、距離感、愛し方がわからない。
誰もそれを教えてはくれなかったし、
知る事の出来る環境になかった。

そんな3人が出逢い、疑似家族の形を作り上げていく。

正直、この作品に出てる俳優さん、不勉強ながら
存じ上げない方ばかり。主演、監督、脚本と大活躍の
上西雄大さんも初見。

この粗暴な男が泥棒に入った先で出くわした
少女、マリにだけは心を開き、マリのピンチには
必ず駆けつけて来る。

母親のオトコにアイロンを当てられそうになる直前に、
ガラス戸を蹴破って入って来る金田はマジ、ヒーロー。

しかし・・・弱い。本当に弱い。
目も当てられないほどに弱い。

無敵ではないところに金田の人間味を感じるのだろう。

ひとつだけ引っかかったのは、金田がコソ泥を行ったと
確信しながら旧知のベテラン刑事が金田に職を紹介する。
刑事が犯罪者を目の前にしながら、目をつぶる。
そんな事があってよいのか?

結局、その刑事が見逃しても、疑似家族の終焉は
やってくるのだが・・・。

大きな予算がなくても、有名な俳優がおらずとも、
「良い作品」は作れるのだ。
邦画の可能性を感じさせる佳作。





■本編出演 上西雄大、小南希良梨、古川藍、徳竹未夏、
 中山むつき、木下ほうか、田中要次、堀田眞三、城明男、
 税所篤彦、川合敏之、椿鮒子、空田浩志、吉田祐健、
 中里ひろみ、谷しげる、星川桂、美咲、西川莉子、
 中谷昌代、上村ゆきえ、工藤俊作、飯島大介さんほか。




評価 ★★★★★
nise!(18) 

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