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「メタモルフォーゼの縁側」2022 [映画・邦画]

メタモルフォーゼの縁側.jpg
〔2022年/日本/日活〕




うらら、17歳。毎晩こっそりBL漫画を楽しむ女子高生。
雪、75歳。夫に先立たれたひとり暮らしの老婦人。

ある日、ふたりは同じ本屋にいた。
うららはレジでバイト。
雪はきれいな表紙に惹かれて漫画を手にとっていた。
それがBLだった。

初めての世界に驚きつつも、男子たちが繰り広げる
恋物語にすっかり魅了されてしまう雪。
そんなふたりがBLコーナーで出会ったとき、
それぞれ閉じ込めていたBL愛が次から次へと湧き出した。

それからは雪の家の縁側にあつまり、読んでは語りを
繰り返すことに。そして二人はある挑戦を決意する。





鶴谷香央理先生の漫画作品を原作として映画化。

芦田愛菜さんがスゴイ!
少女が女性になる直前のわずかな時間を的確に演じる。
当初、見知らぬ婆さんからいきなり話しかけられ、
怖る怖るはじまったぎこちないふたりの関係。

17歳と75歳。歳の差はあれど好きなものは同じ。
BLを語り合える仲間と出会えた75歳のはしゃぎ
っぷりが実に微笑ましい。

近年のコミック原作の映画化といえば、やはり
男と女が登場してくっついたり離れたり、
そんな設定ばかりでうんざりなので、
この取り合わせは新鮮。

75歳の後押しで、17歳はじめてのBL同人誌が完成!
この本が出来上がってきた時の描写もいい。
包装紙をバリバリッ!と破かないのね。
留めてあるテープを丁寧にはがしていく…(笑)

しかし17歳、人生初の同人誌、
夢見たように売れるハズもなく、というか売れない。
まぁ、そりゃあそうだわな。

しかし売れなかったこの同人誌が後に奇跡を呼ぶ…。

いい映画だった。
登場人物に悪いヤツ、イヤなヤツはひとりも出て来ない。
悪役がいなくても、死人を出さなくても映画は作ることが
出来る。原作の持つ「やさしさ」を脚本の岡田惠和先生が
最大限に汲み取り描いた結晶が本作。

好きなものを好きと誰はばかる事無く言える幸せ。
そして、それを言い合える仲間のいる幸せ。
しかし、そんな身近な幸せになかなか出会えないのが
実情ではある。





■本編出演 芦田愛菜、宮本信子、高橋恭平、古川琴音、
 生田智子、光石研、汐谷友希、伊東妙子、菊池和澄、
 大岡周太朗さんほか。




評価 ★★★★☆

nise!(8) 

nise! 8