「マイ・ブロークン・マリコ」2022

〔2022年/日本/エキスプレス〕




シイノトモヨは、うらぶれた下町のラーメン屋で
なんとなく見ていたテレビニュースの中で、
親友のイカガワマリコが亡くなったことを知る。

自殺だという。

マリコは父親から長年にわたって虐待を受けていた。
シイノは父親のもとから、せめて遺骨だけは
救い出そうと、懐にドスを忍ばせて、刺し違える
覚悟を決め、マリコの実家へと向かう。

シイノは、マリコの実家で格闘の末、遺骨を強奪！
シイノはベランダからダイビングして逃走。

マリコが海へ行きたいといっていたことを思い出し、
遺骨を抱えたままマリコが行きたがっていた岬を目指し、
シイノはバスに乗り込んだ・・・。





平庫ワカ先生の漫画作品を原作に、タナダユキ監督が
劇場映画化。親友の自殺をとめられなかったＯＬのシイノ。

なにか出来る事はなかったのか？今からでもなにか
出来ることはないか…と考えあぐねた末の行動が、
遺骨とともに旅に出る。なんと突飛なオンナ。

シイノの珍道中にオーバーラップされるのは、
マリコとの日々。もうマリコはシイノの思い出の中にしか
存在しない。これから先のマリコを知ることはない。

シイノはマリコをめんどくさいオンナ、
守ってやってる、あたしがいないと何もできないと
感じていたが、実はマリコがいたからこそ、
シイノが輝いて生きていられたのだ。

この旅はシイノにとって、マリコからの卒業するための
儀式だったのだ。

本作では永野芽郁さんの熱演ばかりが評価されるが、
重要な場面にさりげなく登場する、地元の釣り人青年、
マキオを演じる窪田正孝さんがいい味を出している。

マキオなくして、この作品は成り立たない。
マキオの設定は深く語られることはなく、シイノとの間に、
恋愛感情も芽生えないが、ただひたすらに「いいひと」

シイノに5,000円と歯磨きセットと別れ際に弁当をくれた、
ただの「いいひと」

人は皆、ひとりで生きているつもりでも、誰かに頼り、
甘え、気づかぬうちに共依存になっているのではないか。

ある日、依存していたものが目の前からいきなり消えた。

その時、自分はどうしたらいいのだろう。
この暮らしが終わる事も想像せず、明日も続くと信じていた。

なんの保証もないのに、無責任に信じていた。

私たちも遺骨を抱いて、二階から飛び降りるか？



■本編出演　永野芽郁、奈緒、窪田正孝、尾美としのり、
吉田羊さんほか。




評価　★★★☆☆