「空白」2021

〔2021年/日本/スターサンズ〕



ある日突然、まだ中学生の少女が死んでしまった。

スーパーで万引きしようとしたところを
店長に見つかり、追いかけられた末に
車に轢かれたというのだ。

娘のことなど無関心だった少女の父親は、
せめて彼女の無実を証明しようと、
店長を激しく追及するうちに、その姿も言動も
恐るべきモンスターと化し、
関係する人々全員を追い詰めていく・・・。




まいったなぁ。
「空白」というタイトル通りの映画だった。

肝心なところがまったく描かれていない。
少女は万引きをしたのか？
店長にバックヤードに連れて行かれ、
少女が店から飛び出していく。
この間になにがあったのか？なにもなかったのか？

学校に乗り込んだ父親に校長が耳打ちする。
「あのスーパーの店長は以前に、未成年者に対して
性犯罪の前科があるらしい・・・」

これの意図は…？標的を自分らから店長に向けるため？

一番肝心な父親の心境の変化。
そして店長が行う土下座の意味するところは？

この「空白」だらけの作劇が監督の意図するところ
なのかも知れない。それでも鑑賞する者にとっては、
いささか不親切ではないだろうか。

父親が普段、気にもかけていなかった娘が亡くなった
途端、いかにも自分は娘を愛していたかという風に
急変するように見えるが、失って気づくこと、
取り返しのつかない事態に愕然とすること、
娘に対して、もうなにもしてやれないこと。

これらの感情が複雑に絡み合い、とにかくぶつける
相手、ぶつける場所を求める…この感情は理解できる。

痛々しかったのは事故で中学生を撥ねてしまい、
その責任から自殺してしまった女性の母親、
片岡礼子さんが葬儀に現れた古田新太さんに近づき、
自分も娘を失った立場でありながら、恨み言を
告げるのではなく、とにかく娘を許してほしい、
これからの罪は自分が引き継いでゆく…と。

出番こそ少ないながら、本作一番の見どころである。

ここから父親の心境にも変化があらわれたように思う。

それに比べて松坂桃李のキンタマの小さいこと！
いくら精神的に追い詰められているとはいえ、
デラックスのり弁当を注文したのに、
店員に間違えられて普通ののり弁当が入っていた。

フタを開けたら、からあげが2つ入ってなかった…。

松坂桃李はすかさず店に電話。
「…お前、殺すぞ！殺すぞ！！」

どれだけ、からあげが食いたかったんだ？！
そりゃあマスコミに利用されて、都合のいい部分だけ
切り取って放送され、悪人に仕立て上げられるよ。

ここまで「空白」を重ねて、あとは見る方々のご想像に
おまかせします…といった監督の作劇ではあるが、
女子中学生が車に撥ねられるシーンだけは克明に、
しかも残酷に、冷徹無比に描き倒す！

ここまで詳細に見せる必要があるの？！というぐらいに。





評価　★☆☆☆☆